【DXスペシャル対談】FinTech News by エムティーアイ

~エムティーアイ×中国銀行 デジタルトランスフォーメーションが生み出すシナジーとは~

 デジタル技術の進化に伴い、今社会で注目されている概念に“デジタルトランスフォーメーション(DX)”があります。
 DXとは、「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること」、「既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすもの」などを意味するとされ、あらゆる企業が競争力の維持・強化を図るためにDXを推進し始めています。

 

 そのような中、株式会社エムティーアイ(以下「エムティーアイ」)は、2019年3月より株式会社中国銀行(以下「中国銀行」)のモバイルを活用したDXを支援するための共同プロジェクトを立ち上げ、地方銀行の新しいデジタル戦略に携わっています。その一環として、6月には両社のプロジェクトメンバーがエムティーアイ本社に集結し、合同チームにより約1カ月でアプリケーションサービスを創り出す“エムティーアイスプリント”を実施しました。
 今回の「FinTech News by エムティーアイ」では、本プロジェクトでタッグを組むエムティーアイと中国銀行の対談を通じて、ICT企業と金融機関が協業することで得られた新たな気づきや、デジタル戦略にかける想いをお届けします。

 

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(左)株式会社エムティーアイ ソリューション事業部 デジタルトランスフォーメーションサービス部 部長

塩本 直弘(しおもと なおひろ)
(右)株式会社中国銀行 営業統括部 チャネル戦略グループ 担当部長

桒田 耕一(くわだ こういち)

 

―エムティーアイスプリントとは―

企画者やデザイナー、開発者などの関係者が一体となり、最短2週間という短期間で、事業やプロジェクトが抱える課題を解消するための具体的なサービスを顧客視点で検討し、実際に触れられるプロトタイプに落とし込むプロセス。

これからはモバイルを通してお客様と接点をつくる時代。「エムティーアイスプリント」までの道のりとは。

―今回、エムティーアイとDXを取り組もうと思った背景を教えてください。

 

中国銀行 桒田(以下、桒田):中国銀行では、お客様と接する機会が確実に少なくなっているという課題があります。これからの時代、スマートフォンがお客様とのメインチャネルになっていくことは明らかだったため、スマホに合わせた適切なコミュニケーションは何だろうと考えていました。しかし、行員だけで考えても全く思いつきませんでした。そこで、アイデアを形にするまでの時間や、効率面から考えて、モバイルの知見を持つエムティーアイさんにお手伝いいただこうと決めました。

 

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桒田)最初は、デジタルで何ができるのか、自分たちの中で「モヤモヤ」していました。
金融機関側が自分達の目線でこだわりすぎると、お客様には受け入れられない商品ばかりになってしまう自己満足の世界になりかねないので、それは避けたいと考えていました。
ただ、デジタルの世界との融合で、それがどう形になっていくのだろうという期待と不安がありましたね。

 

“エムティーアイスプリント”で得られた感動と人財

―今回のエムティーアイスプリントでICT企業×金融という異業種同士の取り組みを行い、互いに得られたものは何ですか?

interview3エムティーアイ 塩本(以下、塩本):デジタルは、何でもできるが故にすごく抽象的な側面があります。自分の中で仮説をもってモノづくりまで一貫していく姿勢がないと、途中でブレてしまいよくわからないものが出来上がったり、本来検証したかった仮説が検証できなかったりします。また、世の中は常に変化しているため、社会環境や前提条件が変わったり、新しい競合サービスが登場するなど、途中で軌道修正しなくてはいけない面も多々あるので、一貫性と柔軟性という両側面が必要です。

今回のエムティーアイスプリントでは、約1カ月間中国銀行の行員の方にエムティーアイ東京本社でのスプリントにご参加いただきましたが、その方々は、一貫性と柔軟性どちらの素質もあり、最後にはエムティーアイの社員のようになっていましたね。(笑)

 

桒田)行員たちは本当に良い経験をしたと思います。次に生きる人財が育った。それが今回の一番の収穫です。

また、銀行側としてモノづくりを通して得たものは、素直に、“感動”です。エムティーアイスプリントでは、実際のアプリケーションサービスのプロトタイプを3つ作りましたが、私たちが抱える課題である「お客様との接点」をつくるサービスが生まれ、「これが自分たちの新しい銀行サービスか」というイメージがとても具体的になりました。

 

塩本)エムティーアイとしては、実際に金融業界で働く人たちとコミュニケーションをとることで、ニュースなどで報道されている金融業界の一般的な強みや課題ではなく、本当の強みはここなのではないかという気づきや、記事には書かれていない課題が見えてきました。

メディアでは「地方銀行」の課題はひと括りで取り上げられていますが、実際に働いている一人ひとりにはそれぞれの考えがあることを強く感じました。「変わらなければ」という使命感を持っている銀行の方を目の当たりにして、自分たちも彼らの役に立たなくては、と奮い立たせられました。

 

いきなり100歩じゃなくていい、いまとは違う景色をみるための最初の1歩を導く支援を

―エムティーアイスプリントを行う上で、心がけていたことなどはありますか?

塩本)現在の行員の方たちの判断基準や価値観に寄せるのではなく、これからのデジタル化が進む時代に求められる新たな基準や価値観を提示していければと考えています。

その中でも、デジタルの世界に一気に寄せすぎず、ちょうど良い塩梅の場所へ導いていく、つまり、100歩進まなくても1歩踏み出すことで今とは違う基準で物事が見えたり、判断できたり、行動に移せるような支援を用意することを強く意識しています。

 

桒田)そうすることで、「モヤモヤ」が少し晴れて「モヤ」になっていきますね。

 

塩本)はい。そのちょうど良い塩梅というのを、もっと探らなければ、と思っています。

interview4―エムティーアイスプリントでサービスを開発し、新たな気づきなどはありましたか?

 

塩本)今回、エムティーアイスプリントで生まれた3つのサービスを実際に使用してみたいか、岡山県に住む方5名にユーザーインタビューを行ったのですが、プロトタイプができていたからこそ有意義なインタビューになったと感じています。

テキストで書かれているサービス内容を提示してもユーザーにはイメージがしづらく、その場で「いいね」となっても、いざサービスが出来上がると「何か違う」という反応が返ってくることも多いです。

しかし、プロトタイプを提示した状態で「このサービスはどうですか、使いますか?」と聞くと、ユーザーからの反応は全く違いました。話だけだとそこまで困っていないと言っていたユーザーが、実際のサービスを目の当たりにすると「いいですね!」という反応に変わることもあるので、良い意味で想定外の収穫がありました。

 

桒田)僕らが前のめりになって「このサービスが良い」と思っても、お客さん側の反応がいまひとつ…、ということがあります。そういう意味でもお客様の声を聞くということは必ず必要です。それを受けて、次にどう活かしていくかが大切だと思いますね。

みんなが「いいね」と思うゴールにたどり着いたとしても、そこが次のスタートラインになると感じました。

 

地域に合わせた今までにない革新的な商品を、エムティーアイ×中国銀行から創り、届けたい

―今回のエムティーアイとの共同プロジェクトを通して、今後岡山県にどのように貢献していきたいとお考えですか?

interview5桒田)岡山県民の独自の行動パターンを考慮したアプリや、お客様との接点が少ない課題を解消するアプリが、今回のエムティーアイスプリントで誕生したので、出来るだけ早く提供していきたいですね。社内でコンセンサスをとったら、あとはどのように訴求していくか、告知していくかが次のステップだと考えています。

今までにはなかった歴史的な商品になれば、と思っています。

 

塩本)そうですね。「訴求」という側面からいうと、銀行と地域のお客様との接点の中でも、口座数だけではなく、もっとアクティブな部分でつながっているポイントを探していきたいです。モバイルというお客様と一番身近なデバイスを通してアプローチをすることを追求していくことが、今後にもつながると考えています。

 

また、実際に岡山県に出向いて、日々入ってくる情報量が圧倒的に違うということを改めて感じました。例えば、東京と比べると岡山は移動手段が車中心であったり、人が集まるエリアも限られているため、街中の看板広告や電車内の広告などの数が圧倒的に少ないです。

 

桒田)なるほど。たしかにそうかもしれません。

 

塩本)リアルな看板広告をひとつとっても、東京で出稿すると埋もれてしまいますが、岡山なら際立つ。そういった地方であることの特色や、銀行の保有資産である土地や建物なども活用し、ある日付や曜日だけ特定の広告で景観に変化を与えることで生活者により気づきを与えるなど、効率的かつ低コストで実現できる訴求方法があると思います。そのような地域の特性を活かしたサービスの訴求方法にも挑戦していきたいですね。

 

―エムティーアイスプリントが終了し、本プロジェクトの次の展開はどうなるのでしょうか?

 

塩本)次は、実際にエムティーアイスプリントで生まれたサービスも活用し、地域生活者との接点づくりを具体化する活動をしていきます。現地とお客様をさらに深く知るために、追加インタビューも行い、岡山県民を丸裸にしていきます。(笑)

 

そして、比較的予測可能且つ中期的な3年後や5年後に焦点をあて、中国銀行様がモバイルも活用してどのように地域の生活者と接点を持ち、どのようなコミュニケーションをとり、地域や生活者に対してどのような関係性を築いている状態を目指すべきか、というビジョンを掲げさせてもらい、そこにたどりつくまでのロードマップを作っていきます。

 

桒田)我々は、お客様とのコミュニケーション手段がないという課題の解消に向け、まずはこのエムティーアイスプリントで生まれたサービスを世の中に出さなければ、と思っています。お客様に届けて初めてスタートラインに立つと思っているので、それを是非、実現させたいですね。

とにかくやってみなくてはわかりませんが、必ず成功する!という想いはあります。

 

エムティーアイと中国銀行が考える、これからの金融業界の未来について

―これからの金融業界に対する考えと、その未来に向けて企業としてどう関わっていくか、お考えを教えてください。

塩本)中国銀行様に関わらず、金融機関は共通の課題認識を持たれています。それはやはり、地域の生活者と地域の金融機関との距離が、どんどん遠くなっているという点です。

店舗をかまえてお客様が自然と来店するような時代は終わったと一区切りつけて、金融機関側がどうお客様に寄り添っていけるかを追求していくべきだと思っています。

 

ユーザー側との接点を構築するために、生活者にとって最も身近なモバイル端末を活用することは非常に魅力的であるとともに、その実現にはアイデアを具体化する実行力や変化への対応力が求められており、これらの活動やマインドセットを新しい文化として金融機関の中に定着させる必要があります。

エムティーアイの最大の強みである、20年以上培ってきたモバイルサービスのノウハウとリソースを生かして、新たなサービス、新たな価値を提供し続ける具体策と、プロモーションを含めたモバイルを活用したビジネスモデル全体のお手伝いをさせていただきたいと考えています。

 

桒田)これからの時代、銀行側がやるべきことのひとつとして、モバイルサービスを作っていくというのは大きな柱ではありますが、もう一方で、やはり「ひと」が何をできるのかという部分を突き詰めていく必要もあります。その人じゃないとできない仕事やサービスが、きっとありますし、「あなたに頼んでよかった、ありがとう」という人としての商売は地銀に必ず残ると思います。

人を育てるのは、我々、地方銀行の仕事です。

 

同時に、世の中が求めるサービスやその質は、モバイルへと比重が高くなってくるので、ICTを活用した生活者に求められるサービスを提供することが必要です。

そこは、エムティーアイの知識や経験、ノウハウを頂きたいと思います。

 

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今後もエムティーアイは、「ICT×金融」のデジタルトランスフォーメーションによって、コスト削減だけではない、新たな金融サービスの創出を実現していきます。

引き続き、エムティーアイと中国銀行のデジタルに向けた新たな挑戦にご期待ください。

 

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