ルナルナのビッグデータ分析から生まれた独自の排卵日予測アルゴリズムとは?


2017年11月に、医療分野の学術論文誌Journal of Medical Internet Researchにルナルナの排卵日予測の独自アルゴリズム開発に関する論文が掲載されました。
ルナルナ独自の排卵日予測アルゴリズムの分析・開発から論文掲載まで携わった、猪狩一郎氏にルナルナ独自の排卵日予測アルゴリズムの詳細、またアルゴリズムを確立するまでの道のりを聞きました。

Profile
新技術開発室
猪狩一郎

東北大学工学部卒業
東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学
博士(学術)
理化学研究所脳科学総合研究センター研究員を経て現職

当社では主にユーザーデータの数値分析を中心として、サービスを支える技術の先行開発を担当する

医学論文に掲載されたルナルナの排卵日予測の独自ロジックとは?

―――ルナルナの独自アルゴリズムとは、簡単に言うと、どのようなものなのでしょうか?

簡単に言うと、オギノ式の改良版です。
オギノ式では、生理日の情報のみを使って、過去の平均生理日から予測される次の生理開始日より14日前を排卵予定日と予測します。このときの14という数字はどんな生理周期の人でも一定だと仮定されています。

しかし、生理周期は人それぞれなので、一律14日前とするオギノ式に改良の余地はないのか?と考え、ルナルナ独自の排卵日予測アルゴリズムの確立に向けてデータ分析を行いました。

オギノ式(タイミング法と呼ぶこともあります)というのは、自分の生理日くらいしか手持ちの情報がない場合にはかなり有効な方法でした。
しかし、ルナルナの何十万、何百万人という単位で蓄積されてきた生理日やその他のデータを分析することで初めて、オギノ式を改良することが出来るようになりました。

確立したアルゴリズムに一定の客観性を持たせ、また一般に公開するという点で、医療分野の学術論文誌への掲載は重要な意味を持っていると思います。

オギノ式とルナルナ独自ロジックの違いとは?

ルナルナの独自アルゴリズムでも、平均の生理周期が28日の人は、オギノ式と一致する結果が出てきます。
しかし、世の中には平均の生理周期が28日の人ばかりではなく、たとえば24日の人もいれば、32日の人もいます。
オギノ式だと、28日の人も、24日の人も、32日の人も全員等しく、次の生理開始日より14日前を排卵日とします。

―――28日周期から外れれば外れるほど、オギノ式で予測した排卵日では不正確なのでは?という疑問は出てきますね。

そうですね、やはりオギノ式では当てはまらないという人がいるはずなのですが、28日周期の人が最も多いために、そこから外れるほど人数の割合は少なくなります。
このため、全体で何百人、何千人という単位の人のデータだけでは精度の高い排卵日の予測方法を開発することが難しい状況でした。

しかし、ルナルナには28日周期から外れている人のデータも大量に貯まっているので、平均生理周期が同じ人達のデータをグルーピングし、さらに、そのグループごとに排卵日(※病院での検査や、市販の排卵日検査薬で排卵日と特定された日)の記録をかけ合わせて、アルゴリズムを作っています。
そして、この手法による分析を行うにはデータ量は1万人分ほどでは充分ではなく、ルナルナを使ってくださっている方々の何百万というデータがあるからこそ信頼性が高い解析が出来ました。

アルゴリズムが出来てしまえば単純には見えますが、アイディアだけで出来るものではなく、世界的に見ても稀なほど多人数のユーザーデータがルナルナにあるからこそ実際に「正しい」と論文で証明出来るアルゴリズムを確立出来たのです。

その他あらゆる角度から分析を行って、アルゴリズムの確立に至っています。
「平均の生理周期」というのがそもそもどれくらいの期間安定して存在しているのか?といった基本的なところから地道に始めました。
生理周期が26日だった月もあれば、28日だった月もあるという人が多いはずなので、「生理周期が○日周期で安定している」とはどういう状態なのか?ということなども考察しながら検証を重ねました。
データを分析していくなかで、数ヶ月経つと体質変化などによる影響なのか、平均生理周期が徐々に変わってくる人が多いこともわかりました。

―――自分の平均生理周期を計算するとき、あまりにも昔の生理日データまで使ってしまうと、予測精度が下がってしまうことがあるということですね。

そういうことも含め、あらゆることを考慮して、アルゴリズムを作りました。
今までデータの数が少ないためにわかっていなかったことは意外とたくさんあって、そこを一から検証していきました。

妊娠を希望する人の切実な願いに応えたい

―――ユーザーが自力では到底知り得ない貴重なデータの分析結果がルナルナの排卵日予測に反映されているということですね。

はい。ルナルナを使っているだけで、特別な計算を意識しなくてもオギノ式を改良した排卵日予測アルゴリズムで妊活が出来るメリットがあります。

この分析を始めた背景には、「妊娠を希望する方の切実な願いに応えて、少しでも役立つ情報をルナルナから提供したい」という思いがあります。
オギノ式では、なかなかうまくいかない…という方にもぜひ利用してみて欲しいです。

多くの妊娠中の方、妊娠を希望している方がルナルナを使ってくださっているという責任は大きいので、これからも予測精度を上げていくために、ルナルナの運営チームも、研究チームも一丸となって取り組んでいきたいと考えています。

※分析の際に用いるすべてのデータはあらかじめ完全に匿名化されたものであり、個人の特定は出来ません。

掲載先論文 
Journal of Medical Internet Research
『Relationship Between the Menstrual Cycle and Timing of Ovulation Revealed by New Protocols: Analysis of Data from a Self-Tracking Health App』
http://www.jmir.org/2017/11/e391

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