当社では、社員ひとりひとりの生産性の向上を目的に、テレワークやスーパーフレックスに加え、外国籍社員の母国からのテレワークを可能にするなど、柔軟な働き方を可能にするさまざまな制度の整備に取り組んでいます。
その一環として、2023年10月には、育児、介護、不妊治療や自分自身の通院などの特定の理由がある際に、7.5時間分の超過勤務分を1日分の休暇に振り替えることができる「よりそい休暇」を新設しました。
今回は、よりそい休暇の導入に至った背景や活用のメリット、そして今後の人事制度の展望について、人事部長 岩渕 由希のインタビューを通じてご紹介します。
岩渕 由希
人事部 部長
2011年新卒入社。スマートフォンアプリの開発や保守運用を行うApplication Developer Centerなどを経て2014年より人事部に異動。2020年、人事部長に就任するとともに、新型コロナウイルス感染症の流行を機に導入したテレワークを標準化し、さらにコアタイムのないスーパーフレックス制度を導入するなど、誰もが生産性高く働ける職場づくりに尽力する。
働き方の多様化を推進するための新たな選択肢として導入したよりそい休暇
―よりそい休暇とはどのような制度でしょうか?
育児と介護看護、不妊治療、自身の通院など該当する理由がある場合に、超過勤務時間分のうち7.5時間を1日分として、最大週1回、月4回まで休暇に充てられるという制度です。
―「該当する理由があれば利用できる」ということは、全社員が活用できる制度、ということでしょうか?
育児や介護、不妊治療を行っている社員だけではなく、会社から求められた際に、治療計画や診断書などで通院治療を行っていることを提示できるのであれば、誰でも利用可能な制度です。
また、事前に利用対象者であることなどの特別な申請は不要で、有給休暇(以下、有休)と同様に、勤怠システムで休暇申請の際に、取得理由を明記すれば利用できます。
―よりそい休暇を導入するに至った背景を教えてください。
当社は、法律では最長で子どもが2歳までの育児休業を3歳まで取得可能にするなど、育児に関しては法定以上の制度を整えてきました。一方で、介護に関する制度はあまり整備が進んでいませんでした。しかし、将来的には介護に携わる社員も増えていくことが想定されるため、そのような社員をサポートする新たな制度を導入できないか、ということが検討を始めたきっかけでした。
実際に介護中の社員を対象にアンケートやヒアリングなどを行ったところ、「介護のための制度が欲しい」という声よりも、まずは「休みが取りやすくなるように社内の認知理解や働き方によるサポートが欲しい」という意見が多く寄せられました。そこで、介護に限定するのではなく、働き方の多様化を推進するという観点から、より柔軟な働き方ができる制度を検討することになったのです。
―よりそい休暇の制度化に向けてどのような議論が行われたのでしょうか?
育児や、介護看護、不妊治療だけではなく、体調不良など誰もが何らかの理由で通院が必要になることがあるので、この点をサポートできる制度があるといいのではないかと考えました。体調不良などは自らの意志で調整することは難しいので、通院が必要になった際に時間の使い方の選択肢を増やせるようにしよう、と考えて議論を重ねていきました。
その結果、残業時間を休暇として振り替え可能にすることで、働き方の柔軟性をより高められると考え、よりそい休暇を導入することになりました。
「働き方の自由度が高まった」という声の一方で、新たに提起された課題にも真摯に向き合い続ける
―導入後、よりそい休暇は実際にどのくらい利用されているのでしょうか?
2023年10月~12月の3カ月間で、利用人数は10人以上、延べ利用回数は20回以上です。
利用の理由としては、子どもの通院、出産前の奥様の付き添いや入院準備、そして自身の通院となっています。
家族1人につき年間5日取得できる子の看護休暇や介護・看護休暇もあるものの、それだけでは間に合わずに、看護のために有休を使っていた社員からは、「うまく時間を使いながら働けるようになった」という声が寄せられています。
一方で、よりそい休暇に統合した、育児中の社員を対象に月5時間まで育児に関わる時間を労働時間としてみなす「チャイルドタイム」制度を利用していた社員からは、月に7.5時間残業すること自体が難しいということもあり、使い勝手に関する意見をいただいています。
―なぜチャイルドタイムをよりそい休暇に統合したのでしょうか?
チャイルドタイムの統合については、よりそい休暇を制度化する際にもかなり議論になりました。
もともとチャイルドタイムは、毎日全員が会社に出勤していて、コアタイムもあった当時に、子どもの通院などのために数分コアタイムに間に合わないだけで遅刻扱いになってしまう、という子育て社員をサポートするために導入された制度でした。
しかし現在では、テレワークが標準化され、スーパーフレックスも導入されているため、基本的には通勤時間も無く、また自分のライフスタイルに合わせて柔軟に働き方を変えることができるようになっています。そのため、チャイルドタイムによって解決を目指した課題は、テレワークとスーパーフレックスでカバーできるようになっており、チャイルドタイム制度はその役割を終えられると考えたのです。
もちろん、チャイルドタイムの利用者からすると、よりそい休暇は使いにくいという側面はあるかと思います。ただ、人事としては、できるだけ多くの社員に対して、働き方の選択肢を増やしていきたいと考え、よりそい休暇に統合することを決めました。ただし、制度は導入するだけで完結するものではないので、今後もさまざまな社員の声を聴きながら、より良い制度へと進化できるよう取り組んでいきます。
―勤務時間を自由に決められるスーパーフレックスと、よりそい休暇はどう使い分ければいいのでしょうか?
よりそい休暇は、7.5時間の残業分を 1日分の休暇に充てる制度です。そのため、半日や数時間といった使用はできないので、急な体調不良で少し休憩する、少し早めに上がって通院するなどといった急で短時間の通院などの場合には、スーパーフレックスを活用してもらえればと考えています。
一方でよりそい休暇は、検査など事前に予定が分かっており、また、待ち時間も含めて長時間かかる通院の際に活用してもらうことを想定しています。
ですので、通院する際の緊急性や所要時間の長短によって、働き方の選択肢として、スーパーフレックスとよりそい休暇を自身でうまく使い分けてもらえればと考えています。
―通院の際にも有休を使っている社員は多いと思うので、よりそい休暇が活用できるのはとても便利ですね。
本来、有休は仕事以外の課外活動やリフレッシュなど、自身や家族にとって有意義な使い方をしてほしい休暇ですので、これまで、育児、介護看護、不妊治療、通院といった自分では調整ができないやむを得ない理由で有休を使っていたとしたら、とてももったいないことだったと思います。
これからは、よりそい休暇という選択肢がひとつ増えたので、自身のライフワークに合わせてうまく組み合わせて有意義に過ごしてほしいと思います。
「エムティーアイで働き続けたい」と思える環境づくりのために人事制度のさらなる進化を目指して
―よりそい休暇は始まったばかりの制度ということもあり、社内ではあまり理解している社員が少ないようにも思うのですが、その点についてはどう考えていますか?
制度導入時に社内周知はしたものの、よく理解している人とそうでない人が混在しており、社内での理解と浸透はまだまだ課題だと感じています。特に上司と部下の間で、一方が制度を理解していても他方が理解できていないと、制度があっても活用しにくくなってしまいます。
ですので、ポータルサイトで分かりやすく発信するなど、よりそい休暇についてはもちろん、人事制度全般の理解浸透に引き続き取り組んでいきます。
―最後に、人事制度の今後の展望について教えてください。
当社には、国籍もさまざま、家庭の事情もさまざまな多様な人材が働いています。こうした多様な人材に活躍してもらうために、働く上での選択肢をできるだけ提供し、ひとりひとりが自らの力を発揮しやすい働き方を選択できるように、これまでもさまざまな制度の整備に取り組んできました。
今後も、その時々や将来的に必要と想定される新たな制度の導入の検討はもちろん、既存の制度においても、利用した社員の声を聴きながら常に改善に努めていきます。
そして、「エムティーアイで働きたい、働き続けたい」と思ってもらえるように、より働きやすい会社づくりを推進していきたいと思います。
<よりそい休暇概要>
制度名称 | よりそい休暇 |
制度概要 | 育児、介護看護、不妊治療、通院を行う従業員が、該当事由のために休暇を希望する際に所定時間を上回った分を休暇として充てることができる制度 |
利用可能な該当事由 | 育児、介護看護、不妊治療、通院 |
利用可能対象者 |
育児、介護看護、不妊治療、通院を行う従業員(社員・クルー) └育児:中学校就学の始期に達するまでの子を養育する者 └介護看護:介護看護休業規定に定める要介護/要支援/看護状態にある家族を介護および看護する従業員 └不妊治療・通院:各治療における通院の必要を要する者(ただし、会社が求めた際に治療計画もしくは診断書等の通院治療を行っているものを証明することができる人) |
最大利用可能日数 |
最低7.5時間の超過=よりそい休暇1日分となり、以降7.5時間毎に1日分として利用可能になる 最大週1日、月4日まで利用可能(7.5時間×4日=30時間) ※月内での利用とし、翌月繰り越しはなし ※管理監督者は7.5時間超過相当=よりそい休暇1日分とする |
運用ルール |
・勤務時間は原則7:00~22:00の間とし、本制度利用のための土日勤務・深夜労働は原則不可 ・1カ月の所定労働時間を下回ることは不可 ・勤怠状況や成果・業務遂行に影響を及ぼしているもしくは及ぼす可能性がある場合は、本制度を利用できないことがある ・事前に上長の承認を得た上での利用とする。理由を明確に ・勤怠〆後によりそい休暇分の時間が足りていない場合は、有休へ振替を行う |